いまさらアル・ゴアの「不都合な真実」を観た方がいいと思った3つの理由

不都合な真実を観たことのないあなたへ

「不都合な真実」は元アメリカ合衆国副大統領のアル・ゴアが主演したドキュメンタリー映画で、第79回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞、さらには本作での環境問題への貢献を評価され、アル・ゴア自身のノーベル平和賞受賞へも繋がった名作です。

映画が公開されたのは2006年ということで、まだ10年ばかりしか経ってないわけですが、最近の20代の人の中には年齢的にこの映画を観たことの無い人も増えてきてるかもしれません。個人的には環境問題への関心はそれほど高いとは言えない私ですが、アル・ゴアという人の生き様ですとか、大統領になれなかった人が映画というメディアを使って世の中を変えていったということがとても興味深く、今まで何度も繰り返し観ている映画の中の一本です。CSで放送していたもので久々にまた通しで観てしまったのですが、やはりこの映画はドキュメンタリー仕立ての作品として全く色褪せないですし、何より昨今の意識高い系(謎)の系譜においては、かなり重要な押さえておくべきいくつかのポイントを持っていると思いますので、まだ観たことないという人にはぜひオススメしたい映画です。

ポイント1:アル・ゴアの目を見張るプレゼンテーション能力

全編を通してこの映画はアル・ゴアが繰り返し各地で開催している環境保護を訴える講演会のコンテンツを踏襲しています。アル・ゴアはさすが元政治家と思わせる高いプレゼン能力を持っていて、ツカミから本題に至るまでのストーリー展開でぐっと視聴者を引き込みます。ぶっちゃけ、映画としての構成はこの際どうでもいいぐらいアル・ゴアのプレゼンスキルに依存した映画とも言えます。一般的にプレゼンスキルが高いというとみなさんスティーブ・ジョブスを思い出すと思いますが、あれは相当特殊な例でみんながジョブスになれるわけではありません。Appleという会社の製品があり、歴史があり、そしてだいたいどんな新製品が出るか分かっている予定調和の中で、ジョブスというアイコンにみんなが夢中になってて初めて成立するスタイルで、普通の人があそこまでシンプルかつ根拠となる数字もあまり見せずに断片的に語ったところで、多くの人の判断を促すには至らないでしょう。その点アル・ゴアは、当時まだあまり多くの人が関心を払っていなかった地球温暖化という問題について、自身の経験やジョークを織り交ぜつつ、時にちょっと誇大に強調したデータなども見せながら、「初めて聞く」聴衆の心を引き込んでいきます。ジョブスよりちょっと言葉が多くて、数字や過去の引用を効果的に使うこのスタイルは皆さんお仕事のピッチでも真似するべき点が多いのでは無いでしょうか。

ポイント2:アル・ゴア自身の大ピボット

もう忘れてる人も多いかもしれませんが、アル・ゴアは元副大統領で、その後ジョージ・ブッシュと熾烈な大統領選を戦い、惜しくも僅差で破れたという過去があります。つい最近のヒラリー対トランプの戦いと比べても、当時その開票結果を巡って裁判にまで発展したほどの泥試合で、アル・ゴアは一瞬当選確実すら出たにも関わらず最終的には涙を飲んだわけです。その後アル・ゴアは次の大統領選のチャンスを狙いつつ政治家としての活動に戻るかと思いきや、驚きの大ピボットをかまして、環境問題のロビイストとして転身しました。彼自身はそのキャリアを通じてインターネットの発展と環境問題に心血を注いできた人ですが、大統領選での敗北を機に、政治家としてではなく、ロビイストとして啓蒙運動を継続することにしたわけです。そして世界に向けてそれを宣言したのがこの映画なわけです。なんというこのブレない信条、そして発信スキル!(ちなみにインターネット関係でもAppleを含むいくつかの企業の社外取締役や顧問として就任して継続して活動しています)。目的のためな手段問わず、あるいは転んでもタダでは起きないと言うべきか・・・

ポイント3:世の中に与えた大きな影響

ぶっちゃけ、当時はインテリ層というのは浪費の中心にいて、環境問題に意識を持つことが必須と言えるほど高まってはいなかったと思います。この映画の最後に、アル・ゴアはとてもわかりやすいメッセージで、何をどうすればあなた自身が環境問題に貢献できるかを伝えています。このActionable(実行性がある)なメッセージは絶大な効果があり、その後地球温暖化や環境問題に関心を持っていることをアピールすることが、ある種インテリ層のファッションにまで昇華したとも言えます。覚えてる限りだとこんな感じ・・・

  • 電球は蛍光灯に換えよう
  • 運転を控えてもっと歩こう
  • リサイクルに関心を持とう
  • タイヤの空気圧をチェックしよう、できればハイブリッドカーに乗ろう
  • お湯をあまり使わないようにしよう
  • 過剰包装の物を手にしないようにしよう
  • 室温を控えめに調整しよう
  • 木を植えよう
  • 不要な電化製品の電源は切ろう
  • この映画を友達に宣伝しよう

どうです?この無茶苦茶シンプルで実践しやすいメッセージ、しかも最後に「友達にも宣伝してね」ですよ。もうこのラストのメッセージを世界中に広げるためだけにそれ以前の1時間半ぐらいがあるような強烈に分かりやすい映画です。事実、この映画の影響かあるいはこの映画を観た友達や家族からの影響か、アメリカではハイブリッドカーは大ブームになり、ハリウッドスターなどもこぞって温暖化対策のためにプリウスに乗り換えました。また日本では昔から使われていたパルックボールみたいな電球型蛍光灯も普通に手に入るようになり、いまではそれはLED化されつつあります。正直民間レベルだと日本の方が以前よりエコ意識は高かったと思います、光熱費対策って意味も含めて。私はこの映画の影響で、アメリカの社会のかなりの部分で日本の「もったいない」の感覚に近い意識改革がかなり進んだと思います。

結論、もう一度不都合な真実を観よう

TEDとかのプレゼンに萌えちゃう人。スタートアップなどで世の中に変化を起こそうとして努力している人。何か壁にぶつかって転身すべきか悩んでいる人。そんな人はぜひこの映画をいまもう一度観てみることを私は強くオススメします。その際に、CO2とか地球温暖化などの話はちょっと置いておいて、このアル・ゴアという人物が信念に基づいてどう行動して、この映画をどのように利用したのかに思いを馳せると、少し違った角度からもっと楽しめるのではないかと思います。

ちなみに・・・続編来るんですってよ!(公式)

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