今さら聞けないなぜオンラインコンテンツがクソでも金に化けるのか

巷ではキュレーションメディアのWELQが叩かれまくっておりますが、そもそも何でこんなお粗末な雑文メディアがそこまでの影響力を持ってビジネスとして成立していたのかを考える時に「マネタイゼーション」という用語で代表される、オンラインコンテンツの収益化手法についてちょっとまとめてみたいと思います。超初心者向けです、はい。

コンテンツをどうやって収益に変えるか:既存メディアとオンラインメディアの違い

新聞でもテレビでも、何らかのメディア媒体を収益に変える時、最も大きな割合を占めるのは広告収入です。例えば地上波のテレビを考えてみると、こんな感じで全体像を模式化できるかなと。

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このシステムがぐるぐる循環し、営業が広告枠を売る、それを原資に面白い番組を作る、それを観たい視聴者が集まる、人気が出れば営業はより高く枠を売れ、それを原資にさらに面白い番組を作って多くの視聴者を集め…という仕組みです。実際はかなり複雑にステークホルダーが入り組んでいて、たとえば営業は広告代理店という窓口があり、さらに制作自体にも広告主の意向が大きく影響しますし、テレビ局はあくまで放送事業者であって、その下に実際の番組を企画制作するプロデューサーとかプロダクションとか、あるいは放送する枠を決定する編成、出来上がって番組を宣伝する広報など様々な仕事をする組織や人々が集まってこのシステムが回ってるわけです。関わる人が多い分、様々なステップで番組の内容が適切か、どれぐらい数字を取れるか、スポンサーが取れる目星はついているかなどの判断を下してGoサインを出してもらえないと前に進めないことと、1日24時間の中で番組が放送できる枠には限りがあり、その中で優先度をつけてプログラムしないといけないという制約があります。

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一方ネットの収益化モデルは、基本的な構造はテレビに似てはいるものの、大きく異なるのが「アドネットワーク」と呼ばれる広告配信の仕組み、つまり営業やスポンサーを探す努力を行わなくても、自動的にコンテンツや閲覧者に合わせた広告を配信してくれる仕組みが存在することです。Google AdSenseは最も使われている代表的なサービスだと思いますが、アフィリエイトなどその他のオンライン広告サービスも存在します。これにより、コンテンツオーナーは事前に営業と広告代理店を通じてスポンサーを探して出稿の約束を取り付けたり、どれぐらい儲かるかのそろばんを事前に弾くことなく、とりあえず先出しでコンテンツを公開してしまい、その視聴数にある程度比例して広告収入が後からついてくるという仕組みを作ることができました。これってすごく画期的なことです。

またもう一つの大きな違いは、テレビと異なりインターネット上のコンテンツには放送枠の限りという制約がないこと。つまりコンテンツのアイデアと生産能力の限り、いくらでもページを増やしていけるという強みがあります。人気の出たコンテンツはどんどんシリーズ化して増やしていけばいいですし、逆にダメだった記事は明日打ち切りにして落としちゃっても別にどこかに穴が開くわけではないのです。テレビだったら与えられた時間以上は放送できませんし、不人気の番組を落とすならその代替を用意しておかないとテレビが砂嵐になっちゃいます。

オンラインメディア収益化のメリットは

総じて、これまでの既存メディアに比べるとオンラインのメディアは

  • 初期投資がそれほど必要なく
  • とりあえず出しちゃえば視聴に応じた収益は自動的についてきて
  • お伺いを立てないといけない関係者(スポンサー様とか)が少ないため動きを早くできる(撤退も含めて)

という大きなメリットがあります。これは本当に革命的なことで、過去から現在に至るまでウェブにおけるテキスト媒体から、最近はYouTuberという言葉に代表されるようなオンライン動画のメディアまで、様々な形で情報発信をする人がこのシステムの恩恵を受けて増えてきたわけです。

で、結果として何が起きたのか

メリットとしては誰でも自分のメディアを持って情報発信ができるようになったことです。ご存じの通りいまでは星の数ほどのオンラインメディアや個人のブログが存在し、テレビでいうところの番組表である検索エンジンを叩けばいつでも欲しい情報にたどり着けるようになりました。ところが一方でこれが恐ろしい弊害をもたらしていることも事実で、現実に起きていることは中身の薄いコンテンツの粗製乱造と、そんなコンテンツでも検索エンジンの上に表示されるためのSEO対策でなんとか収益化できてしまうという惨状です。

今回のWELQの事件についてもだいぶ以前から業界関係者の間では姿勢を疑問視する声はあったわけですが、前述の通りステークホルダーが少なくスピード勝負の出し逃げが可能なオンラインコンテンツでは、こういった問題は歯止めが効く前に大きくなるところまで急速に大きくなってしまいがちです。しかも落とし所は結局「消し逃げ」だったとw 途中の過程でも、かつての既存メディアだったらいかにもありそうな「スポンサーがつかない、あるいはスポンサーに怒られる」、「初回の公開後に視聴者から苦情がきて止める」、「社内の偉い人から誰がこんなもん作っとんじゃと怒られる」といったチェック自浄機構が働く間も無く超拡大。しかもそもそも情報発信を目的としていたのではなくて、収益を生むための器を作るのが目的で、雑なコンテンツを大量に流し込んだだけだったというのが実態だったということです。あと1~2年もしてこのサイトを初めて見た人はWELQってなんぞや?と思うぐらい遠き日の記憶になっていると思うので、とりあえずニュースへリンクでも貼っときます。

検索エンジンに罪はあるのか

昨今のこういった動きについて、検索エンジン側の不備を指摘する声をあげている人をまま目にします。確かに世の中に溢れるオンラインコンテンツを集めて整理して見つけやすくしているのはGoogleに代表される検索エンジンなので、そのせいでこういった粗製乱造コンテンツビジネスが支えられていると思う人がいても不思議ではないのですが、私はこれはいささか間違った指摘だと思っています。

先に述べました通り、従来のメディアは様々なステークホルダーがいて、たとえばテレビの番組を新しく作ったりしたらそれを宣伝するための広報とか、コマーケティングで売り込むとかプロモーションの努力が必要だったわけです。これはいまのオンラインコンテンツだとSEOとかSEMとか言われるものだったり、あるいはもっと積極的にAdWordsなどでオンラインに広告を打つなどの手法に代替されてきているわけですが、基本的にこれらの要素はすべてコンテンツを公開する側で一元管理かつ簡素化されている以上、すべての責任はそれを公開しているコンテンツオーナー自身に存在すると思います。一方で検索エンジンは何かといえば、これはテレビで言ったら番組表みたいなもので、「いつどのチャンネルに行けばその番組が見られるか」と同じく「どのURLに行けばどのコンテンツが見られるか」を整理して探しやすく表示しているに過ぎません。一部には検索エンジンは自発的にこういうコンテンツを検索結果から排除しない限り共犯だという意見を述べてるメディア関係者もいたのですが、それでは新聞のラジオテレビ欄に「この番組はクソなので当新聞の一存で表示しません」と黒塗りで削除される番組があったら、その時はどう思うんでしょうかね?検閲ダーッ!巨悪の陰謀ダーッ!って騒ぐんじゃないの?w もちろん新聞のラテ欄が地上波だけとかBSだけなどと一定の基準を設けていて、もちろんアダルトチャンネルとかを紹介していないように、検索エンジンにも一定の公平な基準があってそれを逸脱しているものは出てこないようにはなってますよ(児童ポルノとか)。でも番組内容を全部完全にチェックして勝手な基準で掲載を担保するようなことはできないでしょう。

ところでなんとなくオンラインコンテンツって言ってもテキスト媒体を思い浮かべながらここまで書いてきたのですが、本当はテレビとか新聞と比較するにはいまはYouTube やらC CHANNELやら、あるいはソーシャル上の分散型動画メディアを引き合いに出す方がわかりやすいのかもしれません。ここはいま一大トレンドでブルーオーシャンと言われて様々なスタートアップやらVCやらがジャブジャブしてるんですが、一方で潜在的に膨らんできている問題はテキストメディアの比じゃないような気がしています。この辺はまた今度整理して書こうかなと思ってますよ。

このサイトはクラウドソーシングを使ったリライトではないので乱筆乱文大変申し訳ありません。特にテレビ業界の実態とか自分の知識はちょっと不十分な可能性があるので間違ってたら指摘してください。でも安心してください、クソを金に変えようと思ってやっているわけではないので、まだ広告貼って無いですよw(2016年12月8日現在)

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