NAVERまとめに関するLINEの声明で個人的に注目したポイント

キュレーションメディア大炎上、NAVERまとめはどうなんだ?

WELQ事件に端を発して様々なキュレーションメディアに飛び火した昨今の著作権と引用に関する問題ですが、そもそも「キュレーション」って言葉が日本で広がるきっかけとなったこの分野の雄、NAVERまとめはどう対応するのか個人的に興味津々でした。

運営会社のLINE株式会社上級執行役員の田端氏のtweetを見るとこんなこともつぶやいておられましたので、NAVERまとめはこの業界の先駆者として、何らかの鉄壁の守りを敷いていて法的にクリーンに運営されている自信がさぞあるのだろうかと・・・。

一方でこんなネット署名が立ち上がったりして、NAVERまとめへの風当たりも徐々に強まっているように見えまして(勝手に)興味を持って見守っておりました。

そんな中、ついに公式に下記のような見解がLINE株式会社から発表されました。

全体としては、引き続きNAVERまとめはプラットフォームであり、まとめている主体はユーザであること。そしてプラットフォームとしてはプロバイダ責任制限法に沿った運営を行なっているというこれまでと同様の説明でしたが、個人的には末尾の「新方針」に書かれている内容など、いくつか注目に値するポイントが明確に宣言されているように見えます。

今後のNAVERまとめの新サービスに関わって来そうなポイント

みなし非表示を導入してNotice and Takedownへ

「みなし非表示対応」の導入

2016年12月8日以降の申告分より、上記の課題に対する新たな改善策の1つとして、権利者より著作権侵害のご申告をいただいた時点で当該「まとめ」で侵害の可能性があると“みなし”て先に非表示処理を行い、その後、当該「まとめ」の作成者に許諾の有無などの正当性を証明いただき、妥当であると判断される場合のみ、表示を再開する「みなし非表示対応」を開始いたしました。事後対応という点ではまだ課題が残りますが、権利侵害の事実確認について、権利者側の負担を軽減し、作成者側の負担とする対策です。

LINE社「「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解について」より

これって、どちらかというとアメリカのデジタルミレニアム著作権法律(DMCA)に則るところの「Notice and Takedown」に近い対策で、要は疑わしきはとりあえず落とす、落とした後に権利関係の事実確認のプロセスが走り、問題がなければ再表示されるって感じでしょうか。これはYouTube を始めとする米国発祥のプラットフォームの多くが採用している仕組みですが、実はアメリカのDMCAと日本のプロバイダ責任制限法は似てるようで随分取り扱いが違うので、どちらに寄り添うかでサービスの仕組みや運営方法自体も結構変わってきてしまいます。双方の違いとメリット・デメリットに関しては、NY州弁護士の方が書かれた素晴らしいサイトを見つけたのでぜひこちらをご参照ください

1次情報提供者(サイト運営者?)へのインセンティブ還元がスタート?

1次情報提供者へのインセンティブ還元及びまとめ掲載可否設定の実現

1次情報提供者の皆様からあらかじめ著作物と作者情報をセットにしてお預かりし、その著作物をどのように扱うか(まとめられていいのか、まとめられたくないか、また部分的にならOKか等)を自身で設定できる仕組みを実現したいと考えております。また、コンテンツがまとめ記事で紹介された場合、貢献の指標に応じて、1次情報提供者にもインセンティブを還元することなどを検討しています。

LINE社「「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解について」より

これは私の理解が正しければ、「引用されてしまった著作物の権利者にも利益を還元する」という仕組みを作ることのように見えます。これがもし実現されるなら超画期的で、これまで色々なサイト運営者の人が勝手に自分のコンテンツを借りパクされて怒っていたのが、むしろぜひ誰かにまとめてもらって利益を享受したいと思うようになる可能性も秘めています(もちろんまとめて欲しくないという人はブロックもできるようにした上でですが)。

これはYouTubeが実装しているコンテンツIDを用いたマッチングシステムに近いような気がします。YouTubeでは、自分の持っている楽曲や動画が勝手に第三者にアップロードされてしまった場合、1) ブロック(視聴できなくする)、2)トラック(特にアクションは取らないがどれぐらい観られているかは計測する)、3)マネタイズ(勝手にアップされた動画の収益も自分のものとする)というオプションが選べるようになっており、さらにJASRACなどに著作権を信託している楽曲の場合、カバーソングなどについてはカバーした人と著作権者で収益を自動的に分配するような仕組みも備わっています。最近世界中で大ブレイクしたPPAPのカバーソングなども、この仕組みによりピコ太郎自身がちゃんと利益分配を受けられるため、お互いwin-winだったというニュースは記憶に新しいところかもしれません。ニコニコ動画にも「クリエイター奨励プログラム」というものが存在し、これをフックに様々な歌ってみた踊ってみたなど二次創作コンテンツの文化が花開いたことは皆さん良くご存知かと思います。

キュレーションサイトにまとめられてしまうことは悪なのか

個人的にはインターネットのすべてのコンテンツを一点の曇りもなく清廉潔白なものにしようというのは土台無理だと思っています。ある程度の借りパクとかパロディとか、様々な形での二次創作が集まってコミュニティを形成しているのが現在のインターネットの現状で、ここに逆らっても不可抗力なので、どうやってそのうねりを利用して本来権利を持つ人が正しく権利を行使して利益を得ることができる仕組みを作るかの方が建設的だと思います。NAVERまとめに関しては、現状ではまとめた人間とNAVERまとめ自体にはインセンティブがあるにも関わらず、引用された権利者には何のメリットもない、もしくは自分のサイトのトラフィックが減るというデメリットしかないというのが一番の問題で、ここを抜本的に改善すれば何らかの光は見えるような気がします。個人的には1995年ごろからいくつかのサイトを運営しているのですが、「他の人のサイトのリンク集に掲載してもらう」ということが明確に価値を持っていた時代はあったわけですし、現在でもサーチエンジンのインデックスに掲載されるためにサイト運営者自身は様々腐心しているわけです。そのような現実を考えても、外部のサイトにまとめられること自体は決して悪いことだとはどうしても思えず、問題はそのメリットを本来享受するべき人に還元できる仕組みづくりが必要なんではないかなと。

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